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2004年3月下号
Vol.16  花粉症
川名 正博 先生

 
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川名クリニック
新潟市上木戸1-2-15
院長 川名 正博
■プロフィール
生年月日 昭和31年8月10日、新潟市生れ
昭和58年3月 聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業
医学学士所得
昭和58年5月 新潟大学医学部耳鼻咽喉科学講座入局
平成元年9月 アメリカ合衆国ミネソタ大学
Otitis Media Research Center Research fellow(2年1か月)
平成 5年3月  新潟大学文部教官助手
(医学部附属病院耳鼻咽喉科)
平成11年4月 同助教授(医学部耳鼻咽喉科講座)
平成13年4月 新潟大学大学院医歯学総合研究科・口腔生命科学専攻摂食環境制御学講座・頭頸部外科助教授に配置転換(医学部耳鼻咽喉科助教授兼務)
平成15年4月 新潟市開業 川名クリニック
専門分野 臨床:耳鼻咽喉科・頭頸部外科・気管食道科・アレルギー科
研究:中耳炎炎症学・頭頸部腫瘍学
所属学会 日本耳鼻咽喉科学会会員/日本耳科学会会員/日本頭頸部腫瘍学会/日本頭頸部外科学会/
日本気管食道科学会/耳鼻咽喉科臨床学会/日本口腔咽頭科学会/
Association for research in Otolaryngology(USA)
日本耳鼻咽喉科学会専門医  日本気管食道科学会認定医


花粉症とは
 
☆しくみ
 植物の花粉が原因で起こる、アレルギー性の病気です。人間の体には、体内に侵入しようとするいろいろな外敵をやっつけようとする働きがあり、免疫機能と呼んでいます。この外敵に過敏に反応して、無害な花粉にまで免疫機能が強く働いてしまうとアレルギー反応が起こります。
 花粉症は、いろいろな外敵に対して過敏に反応しやすいアレルギー体質の人に多く発症しますが、遺伝的な要素に加えて、環境や食生活などの様々な要因が重なって起こります。
 人間の体には、外部から体内に侵入してくる、体の成分とは異なる物質を排除しようとする生体防御のしくみがあります。
 侵入してくる異物、花粉症の場合は花粉になりますが、これを「抗原」と言い、それに対抗して体が作る防御物質を「抗体」といいます。何度か抗原が侵入してくることで、抗体の量が増え、一定以上の量になったときに再び同じ抗原、すなわち花粉が侵入してくると、抗原は体の中の抗体と結びつき、それまでとはちがった反応をするようになります。これを抗原抗体反応と呼びます。
 この反応が体にとって有益に働く場合を「免疫」といい、病気から体を守るために欠かせないシステムですが、この抗原抗体反応が過敏に働いてしまい体にとって都合の悪い結果を起こすと「アレルギー反応」と呼びます。
 すなわち、花粉が鼻や目に入り、そこで抗原抗体反応が過敏に働いてしまい、いろいろな症状を引き起こすことが、花粉症の起こるしくみといえます。

図1


☆症状
 主に鼻と目に出ます。鼻の症状としては、くしゃみ・鼻水、鼻づまりが3大症状で、目のかゆみを加えて花粉症の4大症状といわれています。鼻がむずむずしたり涙目になるのも典型的な症状です。鼻や目以外にも、皮膚がかゆくなったり、のどのイガイガ、かゆみ、呼吸がゼイゼイする感じといった皮膚や、のどの症状、頭がボーっとしたり、注意散漫、体がだるくなったりする全身的な症状も見られることがあります。
図2
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花粉症に関する疑問
 
 
☆ある年突然発生するのはなぜ?
 花粉、今真っ盛りのスギ花粉を例に取りましょう。スギ花粉は早くて1月中旬から長くても5月ぐらいまで飛散します。その他のシーズンには出会うことがないので、体にスギ花粉の抗体が一定以上の量に達するまで10年以上かかるのがふつうでした。そしてある年、ついに症状が出るのに十分な抗体を持つ体になってしまい、そこでスギ花粉が鼻や目に入ると発症、すなわちスギ花粉症になるのです。従って、15−6年前までは17−8歳以上のおとなの病気でした。
 ただし、近年、スギ花粉量が増加したこと、アレルギー体質の子供が増加したこと、大気汚染、とくにディーゼル車から排出される黒い粒状物質やたばこの煙が花粉症の発症を助長していることから、最近では発症年齢がどんどん低下し、小児にもよく見られるようになってきました。
☆花粉症の地域差はある?
 人が花粉に長く・多く出会っているほど抗体は早く作られるようになります。従って、花粉が多く飛ぶ地方には花粉症の人が多くいます。スギ花粉の場合、有名な地域のひとつに関東・東海地方があげられます。関東地方の北西部の山間部には杉林がたくさんあります。1月からは北西の季節風が日本海を下り、本州の山脈を越えて関東平野に吹きますが、山を下るときに大量のスギ花粉が風に乗り関東・東海地方に降りそそぎます。逆に新潟をはじめ、日本海沿岸地方は海からの風が主なので、花粉の飛散は少ないのが一般的です。従って、太平洋側には花粉症、それも重症な人が多く、日本海側では比較的軽い人が多いようです。 図3
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日常対策
 
 
 抗原である花粉に会わないようにすることが第一です。外出するときは、コートを着てメガネ、マスク、帽子を着用します。ウール地のコートは花粉が付着しやすいので、つるつるしたポリエステル系が良いでしょう。花粉症用のメガネやマスクでなくても、効果は十分あります。ふつうのメガネをしただけで、目に入る花粉量が半分になったという報告があります。
 帰宅したら、玄関の前でコートを脱ぎ、家に入ったら直ちに顔や目を洗い、鼻をかんでうがいをしてください。家の窓はキチッとしめておく、毎日掃除をする、ウール系の洗濯物は室内に干す、布団を外に干すときは、木綿かポリエステルの布をかけることなどもポイントでしょう。花粉をシャットアウトするよう、注意を怠らないようにしてください。
図4
 
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治療
 
 
☆お薬、特異的免疫療法、手術など、たくさんあります。
 お薬は、たいへん多くの種類があり、内服・鼻への噴霧・点眼と多彩です。くしゃみや鼻水が中心なのか、鼻づまりがひどいかどうかなど、症状によって使用するお薬が違います。他の薬との飲みあわせにも気をつける必要があります。専門医と十分に相談し、適切な処方をしてもらいましょう。ただ、お薬はアレルギー反応を抑える効果がありますが、花粉に対するアレルギー反応を起こしてしまうという鼻粘膜の性質を長期にわたって変えるものではありません。従って、薬が花粉症を「なおす」わけではありません。
 特異的免疫療法とは、スギ花粉のいわゆるエキスを少量ずつ注射して、スギ花粉を体に慣らしてしまおうというものです。唯一花粉症が「治る」可能性がある治療法ですが、最低3年は注射が必要です。まれに重篤な副作用がみられることもあり、あまり普及していません。
 手術は鼻づまりがひどく、薬ではどうしても良くならない場合、適応となります。レーザーで粘膜にやけどを作り収縮させる方法が有名になりましたが、電気凝固や凍結手術、薬剤を使っても同じ結果になります。鼻内の状態に応じて、さらにいろいろな手術が行われています。
☆妊娠しているときは?
 妊娠4か月中頃までは、原則として薬物をしない方が安全です。まず、蒸気吸入、入浴、蒸しタオルやマスクなど、薬を使わない方法を試して下さい。4か月以降でどうしても薬が必要な場合は医師に相談して下さい。
図5
☆民間療法は?
 私自身民間療法を実際おこなったことがありませんから何ともいえませんが、厚生労働省の研究班による検討では明らかに有効と証明されたものはなかったようです。
☆注射をすると治ってしまうという治療があるようですが?
 副腎皮質ホルモン、ステロイドといわれる薬剤がアレルギー反応を抑える効果があり、鼻粘膜に噴霧したり、短期間内服することはよくあります。ステロイド剤の効果を長期間持続するように工夫した薬を一度筋肉内に注射すると、2〜4週も効果が持続するという方法で、一見夢の治療のようにみえます。しかし、長期間ステロイドが筋肉内に留まるために筋肉が萎縮しますし、ステロイドの長期使用による副作用が出たり、中止しなくてはならないような病気になっても中止することができないといった大きな問題が生じる可能性があります。大きな危険をはらんだ治療法であり、厚生労働省の鼻アレルギー診療ガイドラインに採用されなかった治療です。お勧めできません。
☆結局どんな治療がおすすめですか?
 すでに花粉症とわかっている人は、花粉が飛散する前から薬を開始し、飛散期間中は継続することが重要です。ひどくなってから使うより良い効果が得られます。専門の先生とよく相談し、必要な検査を行い、それぞれに最適な治療計画を立てることが最も重要です。
 
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