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2004年6月上号
Vol.21  水虫
野本 重敏 氏

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のもと皮フ科クリニック
新津市美幸町1-5-12
院長 野本 重敏
■プロフィール
1964年生まれ 西蒲原郡吉田町出身
1983年 新潟県立三条高等学校卒業
1989年 新潟大学医学部卒業、同附属病院皮膚科研修医
1993年 新潟大学大学院医学研究科(生化学)中退
1994年 県立がんセンター新潟病院皮膚科勤務医
1995年 新潟大学医学部附属病院皮膚科医員
(腫瘍・形成グループ)
1998年 新潟大学医学部附属病院皮膚科助手(皮膚腫瘍学)
2003年 のもと皮フ科クリニック(新津市)開業
■所属学会
日本皮膚科学会        日本皮膚悪性腫瘍学会
日本皮膚外科学会       日本形成外科学会
日本熱傷学会         日本美容皮膚科学会
日本皮膚アレルギー学会
■資格
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
   

水虫とは?
 
虫は、正式な病名を足白癬(あしはくせん)といいます。白癬というのは、白癬菌というカビの一種が、皮膚の表面の角質層に感染して増殖した状態をいいます。俗に「水虫」といった場合は、足に生じた白癬のことをいいます。図1白癬菌は、足の趾(ゆび)のまたのところに感染しやすく、水ぶくれができたり、ジクジクしてただれたようになり、かなりのかゆみを伴います(写真・足白癬)
また、足の裏にも感染しやすく、ときには角質層が厚くなり、白くて硬いゴワゴワした状態になることもあります。
白癬菌は、足だけに感染するわけではなくて、体のいろいろな部位に感染します。その感染する部位によって、いろいろな病名がつけられています。手に感染すれば手白癬、太もものつけ根では股部白癬、胸や腹部、背中などに生じた場合は体部白癬といった具合です。俗に「インキン」といわれるのは股部白癬、「タムシ」といわれるのは体部白癬のことを指しています。これらは水虫と同じ病気と考えてよく、治療法も水虫とほぼ同様で、通常は外用剤を塗るだけで治癒します。
ただし、感染する部位によっては少し治りにくく、水虫よりも治療が難しい場合があります。それは、頭の毛に感染した場合、つまり頭部白癬と、手足の爪に感染した場合、つまり爪白癬です。この頭部白癬、爪白癬は外用剤だけでは完治しないので、内服薬による治療が必要になります。
今回は水虫がテーマですので、主として足白癬と爪白癬について述べます。
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水虫の診断と治療
 
 
白癬は、@足の趾(ゆび)のまたに生じる「趾間型」と、A小さな水ぶくれを生じる「小水疱型」と、B足の裏全体の角質が厚くなる「角質増殖型」の3つのタイプに分けることができます。
部位 所見 かゆみ 内服治療
趾間型 趾間 水疱、びらん あり 不要
小水疱型 足底 水疱、びらん あり 不要
角質増殖型 足底 角質増殖 なし 必要
爪白癬 白濁、肥厚 なし 必要
*趾間・・・・趾(ゆび)のまた
*足底・・・・足の裏
*水疱・・・・水ぶくれ
*びらん・・・皮がむけて、ただれた状態
*角質増殖・・白く厚くなり、硬くゴワゴワした状態
この中でかゆみを生じるのは趾間型と小水疱型で、角質増殖型はかゆみがないのが特徴です。水虫といえば必ずかゆいというわけではなくて、かゆくない水虫もあります。図2
足白癬と診断するには、このような皮膚の所見があるだけでは不十分で、顕微鏡検査によって実際に白癬菌が増殖していることを確認する必要があります。というのは、皮膚の所見が足白癬とよく似ていても、実際は違う皮膚病だったということがよくあるからです。この場合にはいくら外用剤を塗っても良くなりません。自己判断で治療を開始せずに、必ず皮膚科に受診して、顕微鏡検査を受けることをお勧めします。
顕微鏡検査は、足の薄皮などを採取して、苛性カリで角質を溶解し、実際に白癬菌の存在を顕微鏡で確認するもので、5分ほどで終わります。実際に増殖している白癬菌の姿をご覧になることもできますので、ぜひ検査を受けることをお勧めします(写真・白癬菌)
足白癬の治療は単純で、趾間型と小水疱型については、抗真菌剤といわれる外用剤を塗るだけで治癒します。ただし、外用する期間が問題で、かなり長い期間、根気よく外用することが重要で、外用を中断すると再発を繰り返すことになります。趾間型では1−2ヶ月、小水疱型では2−3ヶ月は外用を続けて下さい。足白癬の所見が全く消失してからも、約1ヶ月は外用したほうがよいと思います。抗真菌剤をきちんと塗っているのに、治らないばかりかかえって悪化しているという例がありますが、それは水虫が悪化しているのではなくで、外用剤によるかぶれ、つまり接触皮膚炎を起こしている可能性が高いと思われます。もう一つの角質増殖型は、外用剤だけでは治りにくいので、抗真菌剤の内服治療を併用します。抗真菌剤の内服薬としては、イトラコナゾール、テルビナフィン、グリセオフルビンといった薬剤が用いられます。
図3内服薬が必要になるタイプの白癬として、もう一つ重要なのが爪白癬です。爪白癬では、爪が白く濁ったり厚くなったりします(写真・爪白癬)かゆみなどの症状はありませんが、放置すると爪がボロボロに壊れたり、他の爪にもうつっていきます。このタイプでは外用剤があまり効きませんので、初めから内服治療をしっかり行うことが重要です。先に述べた3つの薬剤が有効ですが、最近ではもっぱらイトラコナゾールとテルビナフィンの2つの薬剤が使われています。どちらも爪白癬に有効ですが、内服のしかたがかなり異なっています。イトラコナゾールでは、1週間内服して3週間休薬するサイクルを3回繰り返す「パルス療法」を行います。テルビナフィンでは、4〜6ヶ月間、1日1回、毎日規則的に内服します。それぞれ一長一短がありますので、皮膚科でよく説明を聞いていただいて、ご自分に合った薬剤を選択されるのがよいかと思います。内服期間は3ヶ月から6ヶ月と長期にわたりますが、どちらの薬剤にしても、爪が完全にきれいになるまでには1年くらいかかります。足の爪は伸びる速度が遅いため、完全に生え変わるまでに1年くらいかかるからです。これらの薬剤は、内服を中止しても薬効成分がしばらくは爪の中に残存しますので、爪が完全にきれいになるまで飲み続ける必要はありません。
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水虫の予防法
 
  
癬菌はヒトを好む菌ですので、感染経路としては、マットやスリッパ、共同浴場の床などを介してヒトからヒトへ感染するという経路が最も多いと考えられています。そこで予防対策としては、まずヒトからうつされないことを考えるべきです。もし家族の中に水虫の方がいれば、早めに治療を受けてもらうことが最も重要なことです。足ふきマットやスリッパを共用しないこと、プールや共同浴場などを利用したあとは、帰宅してからもう一度足を洗うなどの対策が考えられます。たとえ足の裏に白癬菌が1回付着したとしても、必ず水虫になるわけではありませんので、1日1回足をきれいに洗うことで発症を予防することができます。足白癬の発症には、足の局所の状態も関係します。よく知られていますように、高温、多湿の状態では、白癬菌の角質層への侵入が促され、白癬が発症しやすくなります。また、革靴やブーツなどを長時間はくことによって、足に付着した菌が定着しやすくなります。それから、皮膚に小さな傷がつくことによって、菌が角質に侵入しやすくなると考えられています。足をきれいにしようとして、タオルで強くこすったりすると、かえって角質層に目に見えない傷がついて、菌の侵入を促しますので、注意が必要です。糖尿病や膠原病などの基礎疾患のある方では、局所的な免疫力の低下により足白癬が発症しやすくなります。また、湿疹・皮膚炎の治療でよく使われているステロイド外用剤を塗り続けますと、局所の免疫機能が低下し、足白癬を発症しやすくなりますので、これも注意が必要です。
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水虫の疑問・質問 <Q&A形式>
 
  
Q.一般に市販されているフットスプレーなどで、足をサラサラに保てば水虫にはならない?
A. 足が湿った状態が長く続くと、白癬菌の角質層への侵入を促しますので、一定の効果はあるかもしれませんが、それだけでは十分ではないでしょう。1日1回足を洗うことや、マットやスリッパなどによる感染に注意することも必要です。
Q.水虫は足以外にも感染するの?
A. 足以外にも、手、体、頭、爪など、いろいろな部位に感染します。その部位によっていろいろな名前がついています。基本的には水虫と同じ病気と考えてよく、治療法はほぼ同じです。
Q.夏の暑い砂浜を歩くと、水虫が治るって本当?
A. 足の裏に付着した菌は脱落するかもしれませんが、すでに水虫を発症している方には効果がないでしょう。かえって足の裏の皮膚が痛んで、治癒を遅らせる原因になるかもしれません。
Q.水虫になったら、消毒したほうがいいの?
A. いいえ。消毒薬は有効ではありません。ジクジクした水虫では、かえって消毒薬によるかぶれ(接触皮膚炎)を起こし、症状が悪化することがあります。
Q.最近、柔道の選手に流行っている白癬があると聞きましたが・・・。
A. はい。柔道やレスリングなどの格闘技の選手の間で、特殊な菌(Trichophyton tonsurans)による白癬が流行しています。遠征により外国から菌が持ち込まれたと考えられています。水虫というより、頭部白癬や体部白癬のタイプをとります。感染力が強いので注意が必要です。頭部白癬の場合、抗真菌剤の内服治療が必要になります。
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