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2004年11月号
Vol.29   五十肩と腱板断裂
近 良明 先生

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済生会新潟第二病院
新潟市寺地280-7
整形外科 近 良明
■プロフィール
1967年生まれ 新発田市出身
県立新発田高校卒業
福井医科大学卒業
1933年 新潟大学整形外科入局
秋田赤十字病院、下都賀総合病院、水戸済生会病院で研修
1997年10月〜
1998年 3月 東海大学にて肩関節外科臨床研究員
2002年 4月〜
2003年 3月 船橋整形外科スポーツ医学センター、肩関節肘関節外科
2003年 3月 済生会新潟第二病院医長
2003年 6月 第7回 肩関節鏡手術研究会(東京)講師
2003年11月 マイテック、サージカルセミナー(東京)講師
2004年 5月 マイテック、cadaver surgical seminor(ワシントンDC)講師
2004年 7月 日整会スポーツ医学会(東京)肩関節鏡ワークショップ講師
2004年10月 肩関節学会、肩関節鏡視下手術講演会(横浜)講師
■資格
日本整形外科学会専門医
日本肩関節学会会員
日本関節鏡学会会員
   

“いわゆる”五十肩
 
周りの人に肩が痛いというと,とりあえず"五十肩じゃないの"言われることがあります.五十肩という言葉は昔から広く日常生活の中で気軽に使われ,一般の方にもなじみある病名です.しかし一般的な五十肩と我々整形外科で使う五十肩という概念は若干違っております.実は五十肩には定義があります.50歳前後で特に外傷(怪我)がなく,痛みを主体として,肩の動きが悪くなるもの(拘縮を起こしたもの)を言い,他の疾患に属さないものを言います.これがポイントで腱板断裂,変形性関節症,石灰沈着性腱炎などの病態が明らかなものを除いたものということです.
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五十肩の治療
 
 
五十肩を経験された方はお解かりと思いますが,五十肩はいつかは自然に治ります.五十肩の原因は未だ解明されてはおりませんが,病態としては,上腕骨と肩甲骨をつないでいる肩関節包という肩の関節の袋が縮まり,動きが悪くなり,関節の中の圧も高くなり痛くなるようです.(図)我々医療者側としては,その痛い時期をいかに短くするか,痛みを少なくするかということを考え治療いたします.
治療の基本は理学療法すなわちリハビリです.リハビリで大切なことは肩の痛み,肩の動きの悪さ(拘縮の具合)の時期や状態に応じた対処法を行うことです.
特に初期の急性の痛みがあるときは,肩を安楽にできる位置を見つけることから行います.同時に肩への注射や内服薬,坐薬を使用します.例えば夜間痛に対して,枕を抱くようにしたり,布団をたたんで背中の下において頭を高くして寝てもらうようにするなど工夫していただきます.
その時期を過ぎると痛みは良くなったが動かないという時期が来ます.英語ではfrozen shoulder,凍結肩すなわち凍った肩といいます.治療の基本は凍っているので暖める温熱療法を行います.リラクゼーションの意味もあり温泉,お風呂をお勧めします.それに加え筋肉の緊張に対し緊張の緩和のためマッサージ,ストレッチも行います.同時に肩の機能訓練も行います.また肩関節および全身の体操療法や,日常生活動作の姿勢の指導なども行います.
リハビリによって8〜9割以上の方が3〜6ヶ月くらいで症状が改善します.糖尿病など合併症がある場合,経過がよくない傾向があります.またリハビリで症状が取れない人には,肩の内視鏡である関節鏡を用い,縮まってしまった関節包を切離する手術を行うことがあります.術後成績は非常に良好です.
いわゆる五十肩とご自身で思い込んでいたり,適切な診断がなされていなかったため,いたずらに痛みが長引いてしまう患者さんの中に他の疾患が隠れている場合があります.その最も代表的な疾患には,一般の方にはなじみの薄い名前ですが,腱板断裂というものがあります.
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腱板断裂
 
 
肩関節とは上腕骨と肩甲骨とをつなぐ関節で,人間の関節の中で最も動きの大きい関節です.その肩関節を動かしている筋肉は二重構造になっています.内側にインナーマッスルといわれる腱板,外側に大きいアウターマッスルといわれる三角筋や大胸筋などの筋群があります.(図)
腱板は上腕骨を取り囲むようにあり,上腕骨を肩甲骨に押し付け,肩を挙げる最初の動作に関与したり,肩を内側外側に回旋させたりする働きをします.この腱板が断裂すると肩を挙げにくくなったり,肩に力が入りにくくなり,動かすときに痛かったり,また夜間,痛みが出たりします.
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腱板断裂の診断
 
 
診断は問診,理学所見,画像診断の三段構えで行います.問診では外傷歴すなわち怪我あるかをお聞きします.多くの場合転倒で起こります.
実際の診察で,肩の可動域つまり動く範囲を調べたり,力の入り具合,またどの位置で痛いかを診るとおおよそ診断がつきます.
画像診断ではMRI,超音波エコー,関節造影を行います.MRIでほぼ確定診断ができます.また肩関節の中に造影剤というレントゲンにうつる液体を注入する関節造影を行い,この造影剤が関節内からもれることがあれば,腱板断裂が確実に診断できます.
しかし,報告によりますと,肩に症状がない人にでも50歳以上になると年齢に伴って腱板断裂がおこることがわかっており,60歳代で20%,70歳代で30%,80歳代では50%に腱板断裂が認められます.怪我で断裂を起こしたのか,年齢の変化で徐々に断裂してしまったのか判断するのは難しいです.
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腱板断裂の治療
 
 
治療の第一段階はリハビリです.先ほども述べたように腱板断裂を起こしていても症状のない人が多くいます.つまり断裂していても肩をうまく動かすことができれば,痛みなく生活できるわけです.リハビリでは,残っている腱板をうまく,痛みなく動かせるよう腱板機能訓練を中心に行います.
例えばご自宅でできるようなものでは,ボトルエクササイズ,台拭き,うちわエクササイズなどがあります.
また,うまく動かせず痛い場合,他の筋肉や関節も影響が出ますので,温熱療法やリラクゼーションも行います.夜間痛や仕事に障害がある場合肩に注射をしたり内服薬を処方します.
肘を軸にして腕を内側、外側に回旋させる。うちわを持っている腕の肩の力を抜いて行うこと。柄を短くもって指を立て手のひら全体で動かすようにして行うこと。 肘を軸にしてボールを手のひらで転がすようにリズミカルに行う。肩の力を抜いて行うこと。
リハビリをしても症状の改善がみられない患者さんには手術をお勧めします.また若い人で転落などの怪我で急に肩が挙がらなくなった人にも早めに手術をお勧めします.
手術は断裂した腱板を上腕骨のもともとくっついていた場所に縫い付けてくるというものです.従来は皮膚を切り,表面の筋肉を切り,腱板断裂部まで達して腱板を修復しておりましたが,現在では肩の内視鏡である関節鏡を用いて手術を行っています.
関節鏡視下手術によって,皮膚は5から7mmの大きさの傷が5つ程度で,正常な 筋肉への影響を極力少なくすることができます.骨にアンカーという金属製のビスを打ち,そこについている糸を腱板にかけ縫合します.正常な筋肉への影響が少ない分,患者さんの負担が少なく,リハビリも少し早く行えるメリットはありますが,手術には熟練を要します.
昨年の日本整形外科学会で私が報告したのですが,102例の腱板断裂の患者さんの関節鏡視下腱板修復術の術後1年以上の成績は,100点満点の治療成績判定基準で術後平均が約95点で,80点以上の人が約96%と良好な成績でした.
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患者さんへのメッセージ
 
 
肩の痛みで悩んでいる方がいらっしゃれば、自己判断せず一度整形外科に受診してみてください。
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