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2004年12月号
Vol.30   大腸内視鏡検査
林 俊壱 氏

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林俊壱クリニック内科・胃腸科
見附市柳橋町274-23
院長 林 俊壱
■プロフィール
1986年 新潟大学医学部第3内科入局
1987年 秋田赤十字病院にて工藤進英氏(現、昭和大学医学部教授、大腸癌・内視鏡の世界的権威)とともに大腸癌の研究に従事。このときの成果で1989年第15回村上記念「胃と腸」賞を受賞
1997年 医学専門誌『早期大腸癌』専任編集委員に就任
1998年 米国消化器病学会(ニューオリンズ)で研究発表
1999年 欧州消化器病学会および消化器内視鏡学会(ローマ)で研究発表
2000年 米国消化器病学会および消化器内視鏡学会(サンディエゴ)にて研究発表、このときの成果で優秀賞受賞
欧州消化器病学会および消化器内視鏡学会(ブリュッセル)にて研究発表
済生会新潟第2病院消化器・内科部長に就任
2001年 米国消化器病学会(アトランタ)、欧州消化器病学会および消化器内視鏡学会(アムステルダム)にて研究発表
2002年 厚生労働省がん研究プロジェクトチームのメンバーに就任
  * 国内学会では日本消化器内視鏡学会総会、日本消化器病学会総会などにおいてはシンポジスト、パネリストを数多く歴任
『大腸pit pattern診断』(医学書院)、『EMRのコツと落とし穴』(中山書店)、『消化管拡大内視鏡診断の実際』(金原出版)、『色素・拡大内視鏡の最前線』『大腸内視鏡-挿入のコツ』(日本メディカルセンター)などの教科書執筆をはじめ、著書・論文多数
2004年 見附市柳橋メディカルパークに林俊壱クリニック開院
   
■資格など
日本消化器内視鏡学会認定専門医
日本消化器病学会認定専門医
日本内科学会認定医
米国消化器病学会(AGA)会員
日本消化器内視鏡学会会員
日本消化器病学会会員
日本大腸肛門病学会会員
日本内科学会会員
厚生労働省がん研究プロジェクトチーム・メンバー
医学専門誌『早期大腸癌』専任編集委員


急増する大腸癌
 
 癌が1971年に日本人の死因の第一位の座について、既に30年以上が経過しています。この癌の中でも、特に、増加を続けているものに大腸癌があります。平成14年の集計では約37,000人もの方が大腸癌で亡くなっています。大腸癌による死亡率は昭和25年に比べ男性では5倍、女性では3倍と驚異的に増加しており、今なお増加を続けています。最近の癌研究振興団の予測では2015年には男女ともに大腸癌が罹患率で第一位になるといわれています。既に、女性ではここ数年のうちにがんの死因トップになると予測されています。
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大腸癌とは
 
 
 大腸は肛門に近いところから直腸、結腸、盲腸と名前が付いています。(右図)ここにできる癌を大腸癌といいます。
 大腸の壁は5層構造になっていて、内側から、粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、奬膜層という名前が付いています。癌は最初にこの一番内側にある粘膜で発生します。そして、次第に大きくなりながら粘膜筋板という仕切を破り、粘膜下層、固有筋層、奬膜層という具合にどんどん深いところへと根を下ろしていきます。大腸癌は大きく分けると根の深さが粘膜下層までの「早期大腸癌」と、固有筋層からさらに深いところまで根を下ろした「進行大腸癌」に分けられます。(下図)しかし、癌は先ほど示した粘膜筋板を破って粘膜下層にある程度進んだ時点で他の部分へ飛び火(転移)をはじめ、治りにくくなります。したがって、早期癌の中でも粘膜筋板付近にとどまった、まだ根が浅い状態で退治してしまうことが最も理想的といえます。

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大腸癌検診の現状
 
 
 この増え続ける大腸癌に対する対策としては、みなさんもご存じの、検便による「大腸癌検診」が行われています。これは免疫学的便潜血反応というきわめて精度の高い方法で行われていますが、現実には検診を受けた方たちの大腸癌を全ての見つけ出しているわけではありません。
実際には、最も感度の高い2日間便を調べる方法で検査を行った場合でも、検診を受けた人たちにできている全ての癌のうち、進行癌で8割、早期癌では5割を見つけ出すのが精一杯です。「大腸癌検診は異常ありませんでした。」と説明を受ければ、「大腸癌の心配はありません」と太鼓判を押されたように感じるかもしれません。しかし、現実には、進行癌では2割が、早期癌に至っては5割が見逃されているわけです。特に、進行癌の場合には見逃しは致命的です。
 そこで、大腸癌検診でひっかかった人はもちろん、それ以外の人でも健康管理を大切に考えている人であれば大腸の精密検査を受けることが是非とも必要になります。そして、この精密検査の中で最も信頼できる方法が「大腸内視鏡検査」という方法です。
 ところが、この大腸内視鏡検査には「つらく、苦しい検査」といったイメージがつきまとっています。このような事情もあって、実際、大腸癌検診にひっかかった人でも精密検査を受けてくれる人はわずか6割に過ぎません。「大腸内視鏡検査」はそんなにつらい検査なのでしょうか?みなさんの疑問にお答えしながら、「大腸内視鏡検査」の悪いイメージを晴らしていきたいと思います。
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大腸内視鏡検査を詳しく知ろう!
 
 
Q 大腸内視鏡検査とは実際どんなことをするの?
「大腸内視鏡検査」は電子内視鏡という2色ボールペンくらいの太さの柔らかい管を肛門から入れて、直腸、結腸、盲腸という大腸全体を詳しく観察して、病気がないかどうかを調べる検査です。先端にはCCDカメラがついており、これで病気をくわしく観察します。
 最新の内視鏡ではハイビジョン対応のCCDカメラや、顕微鏡に匹敵する100倍までの拡大観察機能をもっていて、従来のものに比べ、格段に精密な癌の診断が可能になっています。
 また、そのCCDカメラの脇には内視鏡手術器具を出し入れする通路などがあります。このため、病気があればその場ですぐに治療してしまうことも可能です。しかも、手術に伴う痛みは全くありません。
Q 精密検査にはレントゲンの検査もあると聞いたが、 内視鏡とどちらが良いの?
「注腸造影」というバリウムを使ったレントゲン検査が確かにあります。しかし、病気を見つける能力では内視鏡には及びません。さらに、内視鏡は病気を見つけた際に治療や組織検査がその場で一度にできる点でも有利です(レントゲンで病気が見つかった場合には、あらためて大腸内視鏡検査を行い、病気を詳しく調べ直さなくてはなりません)。
 このうち特に、病気を見つける能力は精密検査の重要なポイントですので詳しくご説明します。はじめに、大腸癌は早期癌の状態で癌を見つけることが理想的であるとお話ししましたが、この早期癌の中で見逃してはならない重要なものに「陥凹型(かんおうがた)早期大腸癌」という病気があります。以前は、早期大腸癌といえばキノコのように大腸の壁からニョッキリと隆起したものがほとんどだと考えられていました。このような隆起した病気は「注腸造影」でも見つけることが可能です。実際、内視鏡検査がまだなくレントゲンが唯一の大腸検査だった時代には、早期大腸癌はすべてキノコのような形の病気と考えられていました。
 しかし、大腸内視鏡検査の普及とともに隆起ではなく、浅い水たまりのようにくぼんだ形の、とても小さい早期大腸癌があることがわかってきました。この癌はくぼんでいることから「陥凹型(かんおうがた)早期大腸癌」と命名されました。そして、現在、この小さな癌は、進行するのが非常に速く、しかも、飛び火しやすい、とてもたちの悪い癌であることがわかってきました。そして、この「陥凹型早期大腸癌」を見つけることのできる唯一の検査が「大腸内視鏡検査」なのです。
隆起型早期大腸癌
(キノコ型の早期大腸癌)
陥凹型早期大腸癌
(くぼんだ型の早期大腸癌)
 こちらは「陥凹型早期大腸癌」の内視鏡写真です。病気を詳しく診るための青い色の薬を使うと水たまりのようにくぼんだ病気がはっきり見えてきますが、薬をかけない状態ではかなり熟練した内視鏡医でなければ内視鏡検査でも簡単に見逃してしまうことがあるくらい見つけにくい危険な病気なのです。そして、このような病気をレントゲンで見つけることはまず不可能とい えます。
 このような理由から、レントゲンの検査は、何らかの事情で「大腸内視鏡検査」ができない場合の次善の策と考えておいた方がいいと思います。
Q 検査を受けるにはどうしたらいいの?
 まず、専門の医療機関を受診して検査の予約をします。この時に検査に必要な採血や、検査の説明を受けます。医療機関によっては電話の予約のみで検査が可能なところもありますので医療機関に問い合わせてみられたらいいと思います。
 次に、検査の準備です。普通の状態では大腸の中には便がたくさんあり、そのままでは検査ができません。そのために食事制限と下剤の服用が必要になります。
 食事は、検査前日の夕御飯までは食べていただいて結構です。しかし、その後、検査までは水分のみにしていただきます。
 検査をする前に患者さんには下剤を飲んでいただきます。これは腸の中をきれいにして、先ほど説明した「陥凹型早期大腸癌」のような小さな病気でも見逃さないようにするためです。実際には、検査当日に強力な下剤を2リットルほど飲んでいただきます(この他に検査前日の夜にも別な下剤を飲んでいただく場合があります)。そして、便が出なくなり透明な液体しか出なくなった時点で検査が可能になります。
 ただし、下剤の服用で注意しなくてはならないことがあります。それは、大腸癌で腸が狭くなっていると、下剤で一気に大量の便が狭くなった部分に押し寄せて、狭い部分が便で詰まるため危険なことがあります。下剤の飲み方や注意事項を受診された医療機関でよく聞いてから服用して下さい。
Q 検査は痛くないの?
 大腸内視鏡検査で痛みが出る原因は大腸に挿入した内視鏡により、過度に腸が引き伸ばされてしまうことにあります。特に、S状結腸という迷路のように入り組んだ場所を通り抜ける時にこのような状態になります。今まで、これを防ぐには熟練した医師の技術だけが頼りでしたが、最新の内視鏡では、様々な新兵器が搭載されていますので、これを使って検査をすれば、以前より、かなり楽に検査を受けることができるようになりました。この新兵器の1つに小児用内視鏡という通常より細く柔らかい内視鏡があります。通常のものと比べて、かなり細いことがおわかりいただけると思います。その名の通り、もともとは、お子さん用に開発された機種ですが、最新のものは大人にも使うことを前提に開発されたものです。そして、これを使うことにより、腸を引き伸ばす力をやわらげ、苦痛の少ない検査ができるようになってきました。もう一つの新兵器は、硬度可変式内視鏡という機種です。これは、このように内視鏡の手元部分を回すことで、患者さんの腸の状態に合わせ、自在に内視鏡の硬さを調整できるもので、上手に使えば患者さんの苦痛を格段に減らすことが可能です。
 とはいえ、大腸内視鏡検査は、検査を担当した医師の技術レベルにより快適さにかなりの差が出てしまうのも事実です。より一層楽な検査を希望される場合には、いろいろと評判を聞いて、検査担当医を決めるのもいいかもしれません。
Q 内視鏡検査で手術までできるの?
 はい、可能です。たとえ癌であっても、深いところまで根を張っていないものであれば内視鏡手術で完全に治すことが可能です。しかも、手術に伴う痛みは全くありませんし、その日のうちに家にも帰れます。もちろん食事もすぐにできます。実例です。直腸の大きさ約10cmの癌です。拡大内視鏡検査を行うことにより根の深い癌ではないことがわかります。特殊な薬液を癌の所に注入して病気の部分をもりあげます。まず、病気の周囲を電気メスで切り、次に病気全体を剥がすように切っていき、治療完了です。病気が大きいため傷も大きいのですが、3ヶ月後にはほとんど跡形もなくきれいに傷は治っています。もちろん再発もありません。このように、最新のテクニックを駆使すればかなり大きな癌でも十分に内視鏡手術で治してしまうことが可能です。
大きな大腸癌

青い薬品をかけて見やすくしたところ
拡大内視鏡で観察して「根の深くないがん」であることが判明。
つまり、内視鏡の手術だけで治るがんであることがわかりました。

内視鏡手術中継1:がんの中に薬を入れて手術しやすい状態にしているところ。
内視鏡手術中継2:がんの周りを特殊なメスで切っているところ。
内視鏡手術中継3:がんの周り全てを切り終えたところ。 内視鏡手術中継4:がんを全てを取り終えたところ。大きな傷ができている。 内視鏡後3ヶ月:あれだけ大きかった傷はきれいに治り、がんの再発も全くない状態。

Q 保険診療で検査できるの?費用はどのくらいかかるの?
 もちろん保険適応の検査であり、内視鏡手術も保険適応ですので日本全国どこの医療機関で検査を受けてもかかる費用に差はありません。費用は患者さんの条件や、検査および手術の内容によって異なりますので一概にはいえないのですが、例えば3割負担の方ですと、検査のみであれば大体5,600円くらいかかります。もし、病気があり内視鏡手術をするようなことになると大体20,300円くらいの費用が必要ですが、詳しくは検査を受ける医療機関で確認された方がいいと思います。
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患者さんへのメッセージ
 
 
大腸内視鏡検査は決してつらい検査ではありません。検査に踏み切れず悩むより、まず専門の医療機関に気軽に相談してみられたらいいと思います。
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