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2005年2月号
Vol.32   子宮内膜症の診断と治療
源川 雄介 氏

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源川産婦人科クリニック
新潟市松崎873番地
院長 源川 雄介
■プロフィール
昭和49年 4月 新潟大学医学部産婦人科学教室入局
昭和59年 4月 新潟市民病院産婦人科医長
昭和61年 1月 木戸病院産婦人科 初代医長
平成 2年 4月 木戸病院産婦人科部長
平成 6年 4月 新潟大学医学部付属病院非常勤講師牽引
平成 8年 4月 日本産婦人科学会新潟地方部部会理事牽引
平成11年 4月 木戸病院診療部長・産婦人科部長・医局長兼任
平成13年 5月 新潟市松崎に源川産婦人科クリニック開院
 
■資格など
医学博士
母体保護指定医
日本産婦人科学会専門医
   

子宮内膜症とは
 
 子宮内膜症は生殖年令女性の約10%に発生し、月経痛と不妊をひき起こし、女性のクオリテイー オブ ライフを著しく損なう疾患です。子宮内膜症患者さんの90%に月経痛があり、その患者さんの50%近くが不妊を訴えています。重症になると骨盤腔内に広汎な癒着を起こしたり、チョコレート嚢胞と呼ばれる卵巣腫大を起こすことがあり、下腹痛・性交痛・排便痛をきたすこともあります。

◇ 原因は
 不明ですが、月経時に剥離した子宮内膜を混入した月経血が卵管を逆流して骨盤腔内に流出することが原因の一つと考えられています。過程はともかく、子宮内膜が子宮腔以外の場所に生着し排卵周期に同調して発育・増殖・出血することが子宮内膜症発生の原因であり、排卵周期を繰り返すことにより進行し重症化します。

◇ 発生頻度は
 生殖年令女性の約10%に子宮内膜症が認められますが、近年増加傾向にあり現代病として注目されています。すなわち、初潮の低年齢化や晩婚化・少子化という女性のライフスタイルの変化により、一人の女性に発来する月経回数は妊娠期間・授乳期間が短ければ増加します。これにより、月経血が逆流する回数が増加し子宮内膜症発生の機会が増加することにより、発生頻度が増加傾向にあると考えられています。

◇ 診断は
 下腹痛を主訴とする患者さんが受診されると、問診で下腹痛や腰痛が月経周期と同調して増強するものか、排便痛や性交痛の有無を確認します。内診(図1)では子宮腫大(子宮腺筋症)の有無、卵巣腫大(チョコレート嚢胞)の有無、ダグラス窩病変(硬結)の有無などを確認します。経膣超音波検査では子宮筋層内病変の有無や、卵巣嚢腫の性状の診断をします。血液検査では子宮内膜症のマーカー(CA-125)の検査をします。卵巣腫大に関してはチョコレート嚢胞の0.7%に悪性化が認められていることより、必要に応じてMRIやCT検査を行います。最終的に悪性腫瘍を否定しきれない場合には手術による確定診断を必要とすることもあります。
図1
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子宮内膜症の進行期分類
 
 
 アメリカ生殖医学会の分類(図2)が用いられています。進行度T、Uは軽症、進行度V、Wは重症と考えられています。進行度Uではダグラス窩に内膜症病変を硬結として触れ、仙骨子宮靭帯の硬化を認めます。進行度Tは内診では診断できない子宮内膜症と言うのが定義であり、腹腔鏡下手術や開腹手術によってのみ子宮・卵巣・ダグラス窩表面に内膜症病変を認めるものです。進行度Vになると一側または両側の卵巣にチョコレート嚢胞を認め、骨盤内臓器の癒着により子宮の移動性が障害されてきます。進行度Wになると骨盤内臓器の癒着がさらに増強し、ダグラス窩の消失やフローズン ペルビス(骨盤内臓器が癒着により一塊となり、移動性を失った状態)という病変を示します。
図2 子宮内膜症の進行期分類

◇ 子宮内膜症治療の問題点
 治療法の選択にあたり、いくつかの問題点があります。
  (1) 子宮内膜症の90%に月経困難症を認める。
  (2) 子宮内膜症と診断されていなくとも、長期不妊の50%に子宮内膜症を認める。
  (3) 生殖年令の期間進行性である。(続発性不妊の原因)
  (4) 更年期・閉経期になると自然に軽快する。
  (5) 卵巣チョコレート嚢腫の0.7%に悪性化を認める。
  (6) 妊娠希望の有無により治療法が異なる。
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治療法は
 
 
 子宮内膜症に対する治療法は薬物療法と手術療法に大別されます。それぞれがいくつかに細分されるので解説してみます。

 1.薬物療法
  (1) 対症療法
進行度T,Uで比較的症状が軽度の場合、内服や座薬の鎮痛剤で月経困難症をコントロールする方法。
  (2) ホルモン療法
GnRHアゴニスト療法が主流をなっています。排卵周期にある女性にGnRHアゴニストを投与することにより、卵巣ホルモンの働きを抑制し閉経期女性と同じホルモン環境を作ることにより、骨盤内病変を改善し症状を軽快させる治療法です。GnRHアゴニスト療法の有用性は広くみとめられているものの、その効果は薬剤の投与期間(6ヶ月)と投与後半年〜数年に限られており根治することは困難と考えられています。この治療法の副作用として更年期症状と骨量減少が挙げられており、反復治療には注意を必要とします。GnRHアゴニストは点鼻薬と注射薬がありますが、注射薬はかなり高価です。患者さんのライフスタイルにより選択することが可能と思われます。
男性ホルモン製剤の内服薬を投与期間(4ヶ月)内服を継続する治療法がありますが、副作用として体重増加、にきび、多毛、肝機能障害などの他、まれに血栓症を誘発することがあります。
最近、経口避妊薬が症状の軽減に有効であることも指摘されています。副作用として、体重増加、肝機能障害、まれに血栓症などがありますが、副作用軽減のために開発以来3回に及ぶ改良がなされており、長期投与が可能なところが利点といえます。

 2.手術療法

  術式によっては唯一根治が可能な治療方法ですが、女性のライフステージ(ー現在あるいは将来の妊娠希望の有無―)により術式が選択されます。
  (1) 開腹手術
全身麻酔あるいは腰椎麻酔下、下腹部切開にて手術が施行され、術後10日〜2週間の入院と退院後約2週間の自宅療養で社会復帰可能です。術式により根治も可能です。
  (2) 腹腔鏡下手術
全身麻酔下、下腹部に5mm〜10mmの小切開を3〜4箇所加え、内視鏡画像をモニターで見ながら、原則として開腹手術と同じ術式を実施します。術後3日〜5日間位の入院と退院後1週間で社会復帰可能です。特に挙児希望のある患者さんの子宮内膜症に対しては、腹腔鏡下手術が有効であるという報告が多いようです。手術創が小さいこと、入院期間・社会復帰までの期間が短いことが利点、手術時間がやや長いのが欠点といえます。新潟大学附属病院産婦人科では、婦人科良性疾患の90%近くを腹腔鏡下で手術しています。
  (3) 超音波ガイド下チョコレート嚢胞内容除去術
静脈麻酔あるいは腰椎麻酔下に、経膣超音波で確認しながらチョコレート嚢胞の内容液を吸引除去し、高純度のアルコールで固定する術式です。腹部切開創がないこと、術後1日〜3日で退院可能なことが利点、チョコレート嚢胞が大きすぎると対象にならないこと、再発率が高いことが欠点といえます。


◇ 治療法の選択は
 3種類のライフステージを想定して治療法を選択しています。
 1.今後妊娠分娩は全く考えていない場合。
  この治療法は生殖年令を過ぎると自然軽快することが前提になります。
  (1) 進行度T、Uで疼痛が比較的経度であれば、鎮痛剤による対症療法。
  (2) 進行度U、Vで疼痛が強く、チョコレート嚢胞が比較的小さく、閉経が近い年令であれば、GnRHアゴニスト療法を選択。治療終了後そのまま自然閉経につながれば、内膜症は軽快治癒していきます。
  (3) 進行度V、Wでは症状も強く手術療法の対象となることが多いと思われます。進行度U、Vの場合は腹腔鏡下手術で十分な治療効果が得られますが、進行度Wの場合、骨盤内臓器が一塊となって強く癒着していることがあり、術後合併症発生の可能性があり、開腹手術もしくはGnRHアゴニスト療法を先行させた後の腹腔鏡下手術が良いと思われます。

 2.現在挙児希望はないが将来妊娠を望んでいる場合。

  (1) 進行度T,Uで疼痛があれば、鎮痛剤による対症療法が選択されます。しかし子宮内膜症は生殖年令において進行性であること、挙児希望までの期間が長期に及ぶこともあることより、経口避妊薬による治療もあります。
  (2) 進行度V以上のチョコレート嚢胞は自然に消退することはなく、薬物療法では若干の縮小はあっても消失することはないため、一定の大きさを超えるようであれば手術療法が選択されます。比較的小さなチョコレート嚢胞がある場合は、悪性化の有無を確認する検査を定期的に受けていく必要があります。
  (3) 手術療法では、腹腔鏡下手術が第一選択となります。術式としては嚢腫摘出術、嚢腫切開開放し嚢腫内膜のレーザー焼灼、嚢腫内容吸引除去アルコール固定があります。

 3.現在挙児希望があるか、不妊治療を受けている場合。

  子宮内膜症と不妊との間に次のような事実が指摘されています。
  a) 長期不妊患者さんの腹腔鏡所見の50%に子宮内膜症を認める。
  b) 子宮内膜症の進行度T〜Wの間に妊娠成立を障害する程度に差はない。
  c) 子宮内膜症が妊娠成立を障害する機序は、骨盤腔内の癒着だけでなく膜病変より産生される免疫物質が妊娠成立を障害している。
  d) 進行度T〜U長期不妊患者に対し腹腔鏡下で子宮内膜症病変にレーザー蒸散・腹腔内洗浄を行うと高い妊娠率が得られる。
  e) 不妊患者のチョコレート嚢胞に対して嚢腫摘出術を行うと摘出する嚢腫壁とともに原始卵胞を含む正常卵巣組織も一部摘出されるが嚢胞を切開・開放し嚢腫壁をレーザー焼灼すると高い妊娠率が得られる。
  f) 妊娠を希望する子宮内膜症患者さんにはGnRHアゴニストや男性ホルモン製剤は原則として使用しない。理由としては薬物使用期間+数ヶ月間は排卵が抑制され不妊期間を延長してしまう為である。
  g) 重症な子宮内膜症患者に一定期間治療して妊娠成立をみない場合には、体外受精―胚移植も適応となるので検討を要する。
  以上より子宮内膜症を有する不妊患者さんに対する治療は、
  (1) 軽症の場合には、疼痛に対して対症的に鎮痛剤を投与しながら、一般的不妊治療を行います。
  (2) 6ヶ月〜12ヶ月不妊治療を行って妊娠成立しない場合には、積極的に腹腔鏡下手術を行い、進行度の正確な診断と治療を行い、不妊治療を継続します。
  (3) 腹腔鏡下手術後6ヶ月〜12ヶ月をめどに妊娠成立を見なければ体外受精―胚移植も検討します。
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終わりに
 
 
 子宮内膜症は原則として良性疾患ですが、病像は進行性であり疼痛や不妊という面から女性の生活のクオリテイーを障害します。「月経痛が他人より強いようだ。」または「夫婦で望んでいるのに、なかなかに妊娠しない。」というようなことがあれば、一度産婦人科を受診されることをお勧めします。
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