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2005年5月号
Vol.35   緑内障
祖父江 邦子 先生

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祖父江眼科医院
新潟市亀田本町3丁目4-10
院長 祖父江 邦子
■プロフィール
新潟県出身
昭和45年 新潟大学卒業
昭和54年 亀田町に眼科医院開業
現在に至る。
 
■資格など
日本眼科学会専門医
医学博士
 
■所属学会
日本緑内障学会会員
   

はじめに
 
皆さんは緑内障という眼の病気を知っていますか?
最近テレビや新聞などでよく取り上げられますので、お聞きになったことはあると思います。昔は“あおそこひ”と言われ、現在でも中途失明原因の2位に上げられるめんどうな病気です。(表1)
しかし残念ながら意外に正しく理解されていません。
眼科専門医として、皆さんを失明から守る為にも、今回は緑内障のお話をさせて頂こうと考えます。
一言で言えば緑内障とは、“眼球の内圧(眼圧)で眼の神経(視神経)が傷害され枯れてくるため、少しずつ視野がかけ、最後は失明する病気”です。(図1)しかし緑内障の多くはゆっくりと進行するので自覚症状が無く、気付いた時はすでに手遅れ、といった経過をとります。(写真2.3)



<緑内障の視野欠損進行過程>   
写真2 <正常左眼の視神経(眼底写真> 写真3 <進行した緑内障の視神経(眼底写真)>

図2  正常左眼の視野(縦横線の交わる所が視点)見つめている所 図3   進行した緑内障の視野(視点のまわりに少し、及び左下方に視野が残っている)

数年前岐阜県多治見市で40才以上の一般住人の方を対象に日本緑内障学会が行った集団検診がありました。その時それまでの通説をはるかに超え6%近く、つまり17人に1人が緑内障だったのです。勿論その方達はその時点でほとんど自覚症状も有りませんでした。眼の病気でも、例えば網膜剥離は現在では適当な時期に手術すれば殆ど治ります。しかし緑内障は神経そのものが枯れてしまう病気で、治療してもそれ以上の進行を止めるのが精一杯で傷んだ神経を元に戻すことは出来ません。と言う事は、キーワードは“早期発見”です。その為にも緑内障という病気を正しく理解して頂きたいと思います。このサイトを御覧になっている方にも、今すぐ治療が必要な方もいらっしゃるかもしれません。また現在は何の問題が無くても、将来緑内障になる危険が極めて高い方がいらっしゃるかもしれません。
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どうして緑内障になるのでしょう? 
 


図4は眼の断面図です。前の部分を拡大した物が図5です。この部分の組織の栄養の為、毛様体といわれる所から、房水という酸素や栄養に富んだ水が分泌されそれが眼の中のレンズである水晶体と虹彩(瞳孔の回りに見える茶目、レンズの絞りのような働きをする物)の間を通り流れています。その房水が角膜と虹彩の間 ここを隅角と呼びますが、そこから繊維柱帯(房水を流し出す排水溝の様な物)に入り眼外に出て行きます。この隅角と言う部分の名前はこれから何度も出て来ますので、覚えておいて下さい。この房水の流れが正常であれば眼圧は一定に保たれ、眼もよい環境で機能出来るのです。しかしさまざまな理由で房水の流れ出ていきかたに問題が起きると眼の圧が上がり、視神経を傷害する緑内障になります。
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緑内障のタイプ
 
一言に緑内障と言ってもいろんなタイプが有ります。ここでは大きく2つに分けて説明しましょう。

1、 隅角の広いタイプ(ゆっくり進行するタイプ)
  →排水溝(繊維柱帯)が目詰まりする。
   原発開放隅角緑内障
   正常眼圧緑内障 など。
このタイプはかなり進行するまで自覚症状は出ません。何となくおかしい、見にくいと来院される時には、視神経は随分枯れ、視野も狭くなっています。
眼圧の上がるのが緑内障と言いましたが、不思議な事に眼圧の上がらない緑内障も有るのです。それを正常眼圧緑内障と呼びます。一般に正常と言われる眼圧でも人によっては視神経に負担となり、この為緑内障と同じ病変が進行します。実は日本人に一番多いタイプで、これもゆっくり進行します。

2、 隅角の狭いタイプ(急に発症するタイプ)
  →排水溝(繊維柱帯)への房水が流れが
    虹彩によって塞がれてしまう。
    閉塞隅角緑内障 など。
このタイプは自覚症状が急に出ますし、いったん出ると、眼圧が極端に上がりますので、眼痛、頭痛、嘔吐など、たいへん苦しむ事になります。眼の病気とは気付かれず、頭や胃腸の病気と間違われる程です。ひどいと一晩で失明する事も有ります。
3、 その他先天性のもの、炎症や糖尿病に合併するものなど有りますが、今回は割愛します。
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緑内障の早期発見、進行防止
 
では緑内障の早期発見、進行防止のためにどうしたらよいでしょう。
緑内障のお話をすると、とても恐ろしくどうしようも無いように思われがちです。確かに今はまだ100%治すことは出来ませんが、ちょっとした注意で隅角の狭いタイプは予防出来ますし、隅角の広いタイプも視野欠損を進行させずに押さえて行く事は可能です。その為やはり眼科専門医で検査をお受けになることをお勧めしますが、そのタイミングと“コツ”をお教えします。
一般に緑内障の有病率の高いのは40才以上ですから、まず40才になったら一度検査をお受けになること。緑内障は遺伝疾患では有りませんが、体型、顔だちが親子似るように、眼の形(質=たち)も似ます。ご両親や血縁のどなたか緑内障の方がいらっしゃる場合は特に要注意です。

◆隅角の広いタイプの緑内障に関しては、一度検査を受けられ(a)異常がなければとりあえずの心配は少ないと考えられます。その場合でも、“5年に一度”検査をお受けになれば安心です。初めの検査で(b)眼圧が高いとか、視神経に異常が見つかった場合はその程度によって、定期的な検査、もしくは緑内障としての治療を要す。と言う事に成ります。早く見つかったのであればその後も視機能の維持は容易で一生ご不自由が出ることは無いでしょう。

◆隅角の狭いタイプの緑内障は、眼の構造上特に遠視の方がなり易い傾向が有ります。若い時から視力が良くて自慢だったという方が要注意です。ひとたび発症すると大変ですが、簡単な検査で心配が有るか否かがすぐ分かります。
検査で隅角が狭い事が見つかった場合、その角度次第で、(a)今はまだ大丈夫だが将来心配だ、または、(b)近々、眼圧の急激上昇による発作が起きそうだと、判断出来ます。
(a)の方は、程度に拠り定期的に様子を見る事に成ります。
(b)の方は、緑内障が発症しないように予防手術をする事になります。



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治療方法
 
隅角の広いタイプの緑内障では眼圧を下げる事が必要になります。まず、点眼薬により眼圧を下げます。最近各種の点眼薬が開発されています。点眼薬で効果が十分得られない時は、手術で眼の中から結膜下に房水を流し出すミクロの道を作り眼圧を下げます。
いろんな手術方法が有ります。
【外科的手術】
  
<手術前> <手術後>

隅角の狭いタイプの緑内障では眼圧が上がらないようにする事が大事です。その為発症しそうな眼に対しレザーで虹彩に小さなあなを開け眼の中に房水の流れ道のバイパスを作り、眼圧が上がるのを予防します。比較的簡単な処置で解決できますので、ご心配いりません。(図8)


不幸にして眼圧上昇発作が起きてしまった場合でも点滴やレザー治療で眼圧を下げる事は出来ますが、一旦発症してしまうと治療しても高度の後遺症が残る事も有ります。
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終わりに
 
 
緑内障は“早期発見と進行防止”が重要と申し上げました。進行して視野が狭くなりさらに視力が低下してからの治療はどんなにがんばっても、それ以上の回復は望めません。そういった末期緑内障ですと、ご本人も一生懸命治療に協力してくださいますが、自覚的に良くしてあげる事は出来ず、私としても情けない思いをします。また、たまたま検診で見つかったとかゴミが眼に入ったというような些細な事で来院された方に早期の緑内障が見つかったり、今にも眼圧上昇発作が起きそうな眼が見つかった場合、視力も悪くありませんし、痛くも痒くも無い訳ですからなかなか本気に成って下さらないのが、私の悩みと成るわけです。
再度、中高年の皆様に検診をお勧めします。緑内障はとても多い病気ですが、早く見つかれば恐い病気ではありません。
本日は私の話をお聞き下さいまして、有り難うございました。今回の話が皆様の健康維持の為に少しでもお役にたてたら幸いです。
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