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2007年1月号
Vol.55 社会不安障害(SAD)

院長 中村 守也 氏


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万代こころのクリニック
新潟市東大通1-1-1 三越・ブラザー共同ビル2F
院長 中村 守也
http://www.iryou-hiroba.com/detail/10610/
■プロフィール
経歴 平成4年 佐賀医科大学(現佐賀大学)医学部 卒業
同年   東京慈恵会医科大学 精神医学教室入局
平成7年 高田西城病院 勤務
平成9年 東京慈恵会医科大学第3病院医局長
平成11年 川室記念病院副院長
平成18年7月 万代こころのクリニック開院
資格 精神保健指定医
日本医師会認定産業医



はじめに
 
 「人前で話をする時に緊張してしまう」「緊張して人と食事が出来ない」「人前で手が震えて字が書けない」などの不安を強く感じたことはありませんか?人前で話したり、食べたり、書いたりしようとすると、不安や恐怖をおぼえて赤面する、汗がでる、震えや口の渇きがおこるため、他人に気づかれまいとして不安のもととなる状況を避けようとしていませんか?そのような不安感や行動が性格だからとあきらめていませんか?
 実はその症状が脳内物質の機能異常による社会不安障害(SAD)という「病気」の可能性が高いのです。そして適切な治療を行えば改善できる可能性もあることがわかっています。
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社会不安障害(SAD)とは
 
 社会不安障害とは、大勢の前で発言したり、初対面の人と会ったり、人前で字を書いたりといった状況で、極度の緊張や不安から赤面、震え、動悸、発汗などの身体症状が生じて、このような症状のために人前で恥をかくのではないかと恐れて対人場面を避けたりしてしまいます。そのため会社や学校などに行けない、家に閉じこもってしまうなどの日常生活に支障をきたしてしまう病態をいいます。
 また社会不安障害は「恥ずかしがり」のような性格と違い、その状況に慣れることがないということが特徴的でもあります。
 欧米の報告では、全人口の約10%〜15%の人が罹患しているとの統計結果もあり、日本国内では約300万人以上の患者さんがいると推定されており非常に多い障害と言えます。10代半ばから20代前半にかけて発病するケースが多く、慢性に経過するため症状を「性格」としてあきらめてしまう人も多いと言われています。
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社会不安障害(SAD)と「恥ずかしがり」との違い
 
社会不安障害(SAD) 単なる「恥ずかしがり」
・状況に慣れることがなく常に不安である。 ・恥ずかしさを覚えても徐々に慣れてくる。
・他人より羞恥心や不安感、ふるえや赤面、発汗が強いと自覚している。 ・他人と比べて自分の恥ずかしさが強いとは感じない。
・強い不安を感じると赤面、ふるえ、吐き気などの身体症状が出る。 ・不安を感じても強い身体症状はない。
・不安を感じる場面を避けてしまう。
・日常生活に支障をきたしている。
・日常生活に大きな影響はない。
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社会不安障害(SAD)が発生しやすい状況や症状
 
 社会不安障害の患者さんは周囲からの否定的な評価や失敗、恥をかいたりする可能性のある状況や行為を非常に恐れる傾向が強くあります。知らない人に会ったり、注目されるような発表や発言をもとめられるような状況や、人前で電話や食事、字を書くような行為に対して強い恐怖感を抱いています。また恐怖や不安に伴って緊張・赤面・ふるえ・発汗・動悸・息苦しさ・腹痛・尿意などの症状が現れます。

1)社会的状況
・大勢の人の前での行為や会話
・会議や授業で意見を言ったり発表する。
・試験を受ける
・パーティーなどに出席する


2)生理的状況
・人前でおなかが鳴る
・人前でおならが出そうになる
・外出中にトイレに行かなければならない

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症状のメカニズム
 社会不安障害になりやすい人の傾向として、自分への要求水準が高い人や他人の評価を気にする人などが挙げられます。例えば、人は良い評価を得られないと感じると、強い緊張感や恥ずかしさを感じるものです。そしてそのことが不安感となり、動悸や発汗、震え等の身体症状となって現れます。すると今度はその症状が周囲に知られることが心配になり、症状を抑えたいという感情が働きます。しかし抑えたいと思えば思うほど緊張が増してしまうと言う悪循環が起こってきます。結果として悪循環から逃れようと対人場面を避けるようになってしまいます。
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社会不安障害(SAD)の原因


 社会不安障害の原因としては以前から社会的状況における認知面での脆弱性や遺伝的な要因が関係しているのではと言われていましたが、最近では脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドパミンなどのバランスが崩れ、神経が過敏な状態におかれることにより発症するのではと言う説が有力になっています。
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社会不安障害(SAD)の治療 
 社会不安障害の治療には大きく分けて薬物療法と認知行動療法の二つがあります。実際の治療ではこれらの二つの治療法を併用しながら進めて行くことになります。

1.薬物療法
 最近の研究では、社会不安障害は脳の神経伝達物質(セロトニン、ドパミンなど)の機能障害により起こってくるのではと考えられており、欧米では早い時期から抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使われ効果が証明されています。日本では以前は即効性のある抗不安薬が主に使われていましたが、最近はSSRIも社会不安障害の治療薬として使われ始めています。SSRIは従来の薬物と比較して副作用が少なく、長期間でも安心して服用が可能であると言われています。


2.認知行動療法
 認知行動療法では、エクスポージャー(曝露療法)やソーシャルスキルトレーニング(社会技術訓練)等の方法があります。これは実際に恐怖を感じる場面に直面した時に不安をコントロール出来るように訓練していく治療法で、不安が起こるメカニズムを認識し、不安を引き起こしてしまった誤った認知行動パターンを修正していくことで不安を取り除いていきます。また、実際の社交的な場面において、どのように人と接するかを訓練する方法もあります。
 認知行動療法は、薬物療法とは違い副作用は少ないが、患者さん自身も努力しなければならないといった面ももっています。
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おわりに
 
 社会不安障害の患者さんは自分の症状を「性格だから仕方がない」とあきらめたり、「恥ずかしいこと」と考え相談できずに悩み続けることも多くあります。この苦しさや不安を我慢してしまうと症状が悪化し、「うつ病」や「パニック障害」など別の精神疾患を引き起こしてしまう場合もあります。
 そこで家族や友人など周囲の理解も大切になってきます。患者さんの不安や恐怖に共感し、負担に感じるような状況を作らないような工夫をしてあげることが望ましいと思われます。
 社会不安障害は治療可能な疾患であることを本人はもとより周囲も理解し、早めに心療内科や精神科などの専門機関へ受診することをお勧めします。適切な治療が症状の改善、生活の質の改善に繋がります。
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